第53章 発散

「もちろん。台風にぶつかって、撮影は中断よ」

杉浦杏奈は牛乳をひと口飲み、藤原智彦に向かって舌先で唇をなぞる。

「灰原仁司のあの島、景色は確かにいいわ」

「灰原仁司も行ってたのか?」

藤原智彦は指先で机をとん、と叩いた。

「向こうの会社の連中も?」

「当たり前でしょ。しかも結構な人数よ。私はあの人のところの所属タレントだし、今それなりに売れてる。重視するのは当然じゃない?」

首を傾げて見上げる。

「私、美雪にだって負けてないでしょ?」

そう言われ、藤原智彦はむしろほっとした。

前に落水事故があって以来、杏奈の態度はどこか妙だった。だが今を見る限り、相変わらず自分の周りをう...

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